一般の方へ
日本歯科心身医学会の会員は、主に
1)お口の症状で困っている患者様、2)歯科が怖くて治療が受けられない患者様、に適切な対応を行っております。
1)―お口の症状で困っている患者様
こんなことでお困りの場合は「歯科心身症」の可能性があります。
本学会の会員にご相談ください。
「舌が痛い、ヒリヒリする、火傷をした様な感覚がある。」
「歯の治療をしても痛みがとれない。」
「歯科で治療をしてもらっても咬み合せが合わない。ずっと咬み合せが合わなくて困っている。」
「何度入れ歯を調整してもらっても合わない。」
「何度入れ歯を調整してもらっても、入れ歯があたる。」
「口がずっと乾いている。」
「口の中がネバネバする。」
「口の中が気持ち悪い」
「口の中に何かがある様だ」
特にこのような症状で、何件も歯科医院や、口腔外科、耳鼻科などに言っても「特に異常はありません」と言われている方は、「歯科心身症」の可能性が高いと考えられます。これらの原因は明らかとなっていませんが、精神科や心療内科に行くほどでもない、ちょっとしたストレスが関わっていることが多い様です。
「歯科心身症」には次の様なものがあります。
【舌痛症】
舌に特に病気が無いにも関わらず、舌が痛い、ヒリヒリする、火傷をした様な感覚があります。食事中は特に症状はなく、むしろお口の中にガムや飴などを入れておくと症状の和らぐことが特徴です。
【非定型歯痛】
虫歯や歯周炎など、歯の痛みの原因となるものがみられないのに、歯に痛みを感じるものです。歯の痛みは同じ歯だけに感じることもありますが、痛みが他の歯に移動することもあります。入れ歯を何度調整してもらっても痛みがある場合や、歯の神経をとった後何度治療しても痛みがとれない場合、歯を抜いたにも関わらずその場所がいつまでも痛い、などの症状もこれにあたります。
【原因不明のドラウマウス】
口の渇きが続くため病院に行ったところ特に原因がわからないと、言われた場合はこの可能性があります。また、膠原病や糖尿病などの全身の病気があって、それが原因だと言われた場合にも、この可能性があります。
【咬合違和感症候群】
クラウンやブリッジ、新しい入れ歯を入れた後から、咬み合せが合わなく、何度調整されても合わないものです。調整された直後は合った感覚になっても、また翌日から合わない様になってしまうことが多い様です。中には、咬み合せのことで頭の中がいっぱいになってしまう方もいます。
【原因不明の口臭症】
口臭が気になって仕方がない方の中には、他人は口臭が感じないにも関わらず、そのことで悩んでしまっています。口臭検査が行われることもありますが、検査結果で「口臭なし」との結果が出ても、納得してくれない方もいます。
対応・治療:
これらの患者様の治療にあたっては、症状を理解していただける様に充分な説明から始まり、一般的には、心理療法や薬による治療が行われます。精神科や心療内科との連携が必要なこともあります。同じ病状でも、治療法が必ずしも同じではなく、患者様によっては治療効果に差があることもあります。仮に、早期に症状が改善しない場合でも、焦らずゆっくり、症状改善に向け、一緒に取り組んでいく様にしています。
2)―歯科が怖くて治療を受けられない患者様
歯科治療に対する恐怖にもいろいろな種類があります。
「幼少期の歯科治療による恐怖体験」
「歯科治療時の激しい痛みの経験」
「歯科治療時に水を飲み込み、呼吸が苦しくなった経験」
「歯科治療時に吐きそうになった経験」
「歯科は痛い・恐ろしいというイメージによるもの」
など様々ですが、程度の差があれ多くの方が歯科治療に対し恐怖を抱いていることを、日本歯科心身医学会の会員は理解しています。
対応・治療:
日本歯科心身医学会会員の対応・治療は、下記の順となることが一般的です。
a カウンセリング(医療面接)
過去の歯科治療の経験を聞きながら患者様が抱いている恐怖の背景や種類、例えば、麻酔の注射が嫌なのか、削る振動が嫌なのか、削るときの水が嫌なのか、口の中に器具が入るのが嫌なのか、そもそも歯科医院の環境が嫌なのかなどを聞き出し、歯科医がこれから行う内容をしっかり説明します。
b 丁寧な治療・心理療法
十分な説明の後、丁寧な治療を行います。麻酔の注射は、表面麻酔が進歩しており針を刺す痛みはかなり軽減することが可能です。また注射液を入れる際の押される痛みは、時間をかけてゆっくり行うことで軽減できます。削るときの水や、器具が口の中にたくさん入るのが苦しい場合は、ラバーダムや排唾管といった器具を用いることにより苦痛なく治療が受けられる患者さんもいます。削る際の振動が苦手な方は、振動が少ないように細心の注意をはらいますし、レーザー等を用いた治療を提供できる医院もあります。
心理療法というと難しく感じますが、歯を磨くなど簡単な治療から、徐々に治療難度を上げていく方法が一般的です。想像上の恐怖が強い方には、鏡などで実際の治療風景を見ることにより安心できる方もいます。また、歯科治療で行う様々なことに、どの程度恐怖があるのか点数をつけていただき、尺度をはっきりさせることで治療を進めることができる患者様もいます。幼少期の歯科治療による恐怖体験を持つ方に有効なことが多いです。
カウンセリングと丁寧な治療・心理療法はとても効果的ですが、強い痛みがあるときなどは治療が優先されることもあるので、痛くなる前に来院されるのがお薦めです。
c 鎮静法・全身麻酔
上記の対応・治療でも恐怖心が強い場合は、笑気ガスによる鎮静法や、薬の点滴による鎮静法があります。笑気ガスによる鎮静法は、不安な気持ちをある程度抑える効果があり、一般の歯科医院でも行えるところがありますが、薬の点滴による鎮静法は笑気ガスよりも効果が強く、半分寝ているような状態で治療を行うことができますが、歯科の入っている病院や、大学病院で行われるのが一般的です。
鎮静法でも効果が十分でない場合は、全身麻酔により歯科治療を行います。入院が必要となりますので歯科のある病院や大学病院で行われます。
薬の点滴による鎮静法や全身麻酔は、治療の10日前前後に血液検査などが必要になりますので、急な痛みに対応することができません。
歯科が怖くて治療を受けられない患者様は、痛みが強い時にやむなく歯科医院に来院される事が多いのですが、それではかえって辛い思いをしてしまいます。我慢に我慢を重ね歯がぼろぼろになり、最後は全身麻酔で全部抜いてしまったという事例がありますので、怖い方こそ安心できる歯科医院を探し、定期的に来院することが重要となります。